APPENDIX:「それハモ」に登場する楽曲について
(解説 & お勧め盤)


「それハモ」には、いわゆる運命とか未完成とか新世界といった、いわゆる通俗名曲の類いは一切登場しません。その代わりに、決して万人に知り尽くされている曲ではないにしても、とにかく一度聴けば割とすんなりと許容できるような「魅力的」という意味での名曲がちりばめられています。この「それハモ」を読んで、メロディがすぐに浮かばないあなた、これを参考にして、だまされたと思って一度聴いてみてください。 きっと好きになると思います。(言い過ぎか(^^;ゞ)


ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14a

 まずストーリーの前半に登場するこの曲。心理学でいうところの「昇華」の典型例として、なぜか中学校の倫理社会の教科書に登場していたりする。 第2話で貴子が「振られた腹いせに作った曲」と言い放ったが、まさにそうとしか思えないような過激な表情づけや大胆なオーケストレーション(ダブル・ティンパニを始めとした打楽器アンサンブル、ステージ上のイングリッシュホルンと舞台裏のオーボエの2重奏、弦楽器の「コル・レーニョ」奏法(弓の背中の木で弦を叩く)などなど)が飛び出す。スコアを見ていて飽きることはない。

オネゲル:クリスマス・カンタータ

 ストーリー半ばで、合唱団からの依頼演奏として取り上げられるこの曲は、オネゲル最後の作品。キリストの誕生までのプロセスを描写した前半部は混沌としているが、突如として光が差し、クリスマスらしくなる。第9はもちろん、「メサイア」や「クリスマスオラトリオ」なんか目じゃない。これからのクリスマスはオネゲルの「クリ・カン」で決まりだ!(もっともカール・オルフの「クリスマス物語」、ペンデレツキの「クリスマス交響曲」)という強敵もいるけどね。)

 蛇足ですが、'96のN響の第9(指揮はデュトワ)の前プロがこの「クリスマスカンタータ」。しかも聴きに行ったのが12/25。 良かったぁ!でも12/24にやったらもっとシャレになったのにね。


プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」作品64
 

 コンマス獏が出演した1発オケにて、後述の「ペトルーシュカ」の前プロとして演奏された曲。したがって、間違ってもバレエ全曲ではないだろう。(この曲を全曲演奏する1発オケも、良いかもしれない)作曲者自身が選曲・アレンジした組曲は3種類あるが、幕順がバラバラなことから、全曲ないしは組曲版から抜粋して演奏することが多い。学が「コルネット、いまいち音程が無かったかもね」と言ったことから察するに、少なくとも「騎士たちの踊り」は全曲版を採用したのだろう。この曲の中間部のコルネットソロは、組曲版の「モンターギュ家とキャピレット家」ではカットされているのだ。
 

全曲版

(本場ロシアの演奏って、案外私の好みでない。意外かも知れないが、アメリカ等、英語圏の演奏が非常に迫力があってよろし)

全曲抜粋版

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」

 ストーリー中、千秋は学との別離を決め、この曲を聴かずに演奏会場を出ていってしまう。「人形が人間に恋をする」という、一見御伽噺っぽいが実は不気味な筋書きによるバレエ音楽である。4つの場面に分かれており、それぞれの場面のブリッジの役目をになっているドラムの音が妙に耳に残る。「1911年版」と「1947年版」があり、演奏会でよく取り上げられるのは後者である。ストーリーでは版は特定していないが、静かに終わってしまうオリジナルエンディングを採用しており、「演奏会用コーダ(1947年版の最終ページにある)」は使っていない。

(1947年版)

(1911年版) (あまのじゃく編)

プーランク:フルート・ソナタ

 貴子と吉田の愛を育んだ、というよりも、作曲者には失礼だが「口説くツール」として活用された曲。プーランクならではの、感覚的かつ平易なメロディが存分に楽しめる。(作者は物憂げな第1楽章よりも、底抜けに明るい第3楽章が大好き。)とくに木管楽器の音色が好きであったらしく、この「フルート・ソナタ」を始めとした木管楽器を中心とした器楽曲がおすすめ。弦楽器や金管楽器の曲もあるにはあるが、この人の創る、舌足らずっぽい短いフレーズのメロディは明らかに木管楽器の方が似合う。作者も、プーランクに興味を持ったきっかけはブールグの吹いた「オーボエ・ソナタ」。今でもオーボエ独奏曲の中で一番好きです。というわけで、プーランクさん、色々な意味でごめんなさい。m(__)m

(この他にも、この曲の初演者であるランパル等々、良い演奏は多いです。)
 
 


ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68

 この曲を最後に、学はフロイデ・フィルのインペクの地位を退く(束縛から解放される?)。作曲者20代のころ着想、完成したのは実に40代、という、まさに熟成された交響曲。演奏して、とにかく盛り上がる。出番の多いパートも少ないパートも、それなりに楽しめますよ。

もとい