ショスタコ−ヴィチ:葬送と勝利への前奏曲 〜スターリングラード戦の英霊のために〜

D.Shostakovich:Funeral and Triumphal Prelude in Memory of Fallen Heroes of Stalingrad Op.130


演奏時間約2分、29小節、スコアにして8ページ。シンプルで短いが、中身は非常に濃い。本日の演奏会のオープニングは、この曲を演奏します。副題の「スターリングラード戦」とは第2次世界大戦中にヒトラー率いるナチス・ドイツ軍の一連のソヴィエト連邦侵攻の中でもとくに凄惨なもので、軍需工場が多く立地しているスターリングラード市の陥落を目指すナチス・ドイツ軍と防衛するソヴィエト軍との攻防戦を指しており、これにより一般市民を含む100万人もの命が犠牲となりました。この攻防戦の舞台となったスターリングラード(現ヴォルコグラード市)に記念碑を建立するにあたり、市からショスタコーヴィチへ委嘱され作曲されたのが『葬送と勝利への前奏曲』です。
 曲はアダージョで4/4拍子、重苦しい葬送行進曲調で、この主題は同時期に作曲された交響詩『十月』作品131の冒頭と共通のモティーフを用いています。やがて金管楽器のバンダ(別働隊)も加わり、輝かしく終結します。しかしこのエンディングは輝けば輝くほど「勝利」の気分とは程遠くなり、聴き手はこの攻防戦の犠牲者へ思いを馳せ、悲しい気持ちになります。「やっぱり、戦争ってよくないよ」ということなのでしょうか。

(2018.2.25)


もとい