ストラヴィンスキー:バレエ音楽「プルチネルラ」組曲(1949年版)
I.Stravinsky:"Pulcinella"Suite(1949 Version)
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)の作風は、一生涯を通じてカメレオンの如く二転三転しております。環境の変化にもなじむしなやかさとでも言えましょうかね。かくして彼の作品はあるときはロシア的であり、またあるときはフランスっぽく聞え、そしてまたあるときは新ウィーン楽派のような響きを持ちつつ実はアメリカものであった、というような印象を受けるのでしょう。で、この「プルチネルラ」は?
新古典主義とかかたい話は抜きにして、まあ一寸と聴けばわかりますよ。響きは全くイタリーのコンチェルト・グロッソ風、否イタリーそのものなのです。それもそのはずで、この曲に登場するさまざまな旋律は18世紀イタリーの大作曲家ペルゴレージ(1710〜36)やガロ(?〜?)などの作品から採られているのです。この曲はもともと「春の祭典」などと同様ディアギレフ率いるロシア・バレエ団のために書かれたものでその際にイタリーのバロック音楽の主題を使った作品をと依頼され、最終的に「歌を伴う1幕のバレエ音楽」として1919年にまとめられました。したがって全曲ではソプラノとテノールの独唱が重要な位置を占めていますが、本日演奏される1949年版組曲では声楽は省かれ、完全にインストゥルメンタルなものになっています。
曲の構成は以下の通りです。なお「〜」の表示は切れ目無く演奏されることを意味しています。
1 シンフォニア(序曲)
2 セレナータ
3 a.スケルツィーノ〜b.アレグロ〜c.アンダンティーノ
4 タランテラ
5 トッカータ
6 ガヴォット(2つの変奏を伴う)
7 ヴィーヴォ(デュオ)
8 a.メヌエット〜b.フィナーレ(終曲)
ところで、この手の曲はとにかく萎縮せずに伸び伸びと演奏することに意義があるようで、よって今回はこの曲に関する限り、我々は一切深刻に演奏いたしません。もしかしたら音程やリズムなど、相当はずすかも。ただ、どうせはずすならば「絶妙に」はずしたいですよね。
(1989.4.23)