ニールセン:木管五重奏曲 作品43
C.Nielsen:Quintet For Winds, Op.43
シベリウス、グリーグと並んで北欧を代表する作曲家であるカール・ニールセン(1865〜1931)。デンマーク生まれの彼は、アマチュア音楽家であった父親の影響で幼少の頃から音楽に親しみ、やがてコペンハーゲンの音楽院で作曲を専攻したのを機に、6曲の交響曲やオペラ・室内楽など、素朴で力強い作品を次々と世に送り込みました。
この木管五重奏曲は交響曲第5番などとともに彼の円熟期の傑作と評されており、1922年初頭にコペンハーゲン木管五重奏団の委嘱で作曲され、同年10月に初演されました。ニールセンはさらに同木管五重奏団のメンバ1人1人へ計5つの協奏曲を書き下ろす約束をしていたのですが、フルート協奏曲とクラリネット協奏曲を作曲したところでニールセンは力尽き、残念ながらこの約束は果たせませんでした。
曲は以下の3つの楽章で構成されています。
第1楽章 アレグロ・ベン・モデラート
古典的なソナタ形式でありながら、冒頭のファゴットによるE-dur(ホ長調)の第1主題、その後のフルートとオーボエの飛び跳ねるような第2主題、ホルンによる息の長い第3主題の3つがあたかも会話のように交互に現れては消え、とりとめもなく進みます。時折、調性を離脱した現代的な不協和音も聞こえてきますが、最後はもとのホ長調に戻り、さも何もなかったかのように平穏に終わります。
第2楽章 メヌエット
クラリネットによる、北欧の田園風景を彷彿とさせる素朴な旋律に始まる牧歌的な楽章です。トリオ(中間部)は、少し哀愁を帯びたオーボエの主題を、他の楽器があとから追っかけてカノン(輪唱)風に展開します。
第3楽章 主題と変奏
イングリッシュホルンの先導による北欧特有の幻想的な序奏に続き、ニールセン自身の旧作の歌曲集『讃歌と聖歌集』から引用された厳かなコラールの主題、そして各楽器が縦横無尽に活躍する11の変奏が展開します。最後にテーマのコラールが拍子を変えて再登場し、A-dur(イ長調)の和音で力強く集結します。
なお第3楽章のファゴットは最後に低いA(ラ)音が出てくるのですが、実は音域外で演奏不可能であり、一般的には1オクターブ上げて演奏されます。しかしながら本日のファゴット奏者は、何とかして作曲者の意向に沿えるよう努力すると申しております。で、どうやって?・・・まあ、ステージ上をご覧になればおわかりかと。
(2013.3.17)