グノー:歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽

C.Gounod:"Faust"Ballet Music



 グノーの作品で最も親しまれている曲は、何といっても「アヴェ・マリア」でしょう。そうです、バッハの「平均率クラヴィーア曲集」第1巻のプレリュードをそのまま伴奏にして奇麗なメロディをつけた、あの曲です。調性よりも旋法が基本になって発達したせいか、フランスの作曲家は、得てしてすばらしいメロディー・メーカーであることが多いのです。なかんずくグノーは、その明快さと親しみやすさにおいて卓越しており、生前より大変人気のあった作曲家でした。
 そして彼は、オペラ作曲家としても有名です。例えばこの「ファウスト」の他にも「ロメオとジュリエット」(余談ですが、本日のマエストロはこのオペラの日本初演を指揮しました)などがよく上演されます。さて、この「ファウスト」、もともとは曲と曲の間にセリフを伴う軽めのオペラ(オペラ・コミーク)として1859年に初演されましたが、10年後の1869年に、セリフの部分も歌に置き換えた本格的なグランド・オペラとして改訂されました。その際、オペラに花を添えるべく第5幕の前半に新たに加えられたのがこのバレエ音楽です。もちろん、思わず口ずさんでしまいたくなるような美しいメロディーが随所にちりばめられています。
 この場面はハルツ山脈のブロッケン山、時はワルプルギスの夜(5/1のイヴ)。わけのわからないままファウストはメフィストフェレスに連れられてここまで来ました。不安になり逃げ帰ろうとするファウスト。そこをメフィストフェレスが「まぁ朝まで飲み明かそう」と引き止め、合図をする。すると辺りは昼間のように明るくなり、古今の美女が現れ、宴が始まる…と、ここで以下7曲のバレエ音楽の始まりとなります。なお、曲間は全てアタッカ(休みなし)で続けて演奏されます。

 1 ヌビア人の娘の踊り(アレグレット)
 2 クレオパトラと金の杯(アダージォ)
 3 ヌビア人の奴隷の踊り(アレグレット)
 4 クレオパトラと奴隷の踊り(モデラート・マエストーソ)
 5 トロイ人の娘の踊り(モデラート・コン・モート)
 6 鏡の踊り(アレグレット)
 7 フリネの踊り(アレグロ・ヴィーヴォ)
 

(1998.2.1)


もとい