ホルスト:ブルック・グリーン組曲(1933)
G.Holstt:Bruck Green Suite(1933)
グスターヴ・ホルスト(1874〜1934)といえば、組曲『惑星』や吹奏楽のための組曲など、金管楽器や打楽器の活躍するかっこいい曲を連想される方がほとんどでしょう。しかしその一方で、美しく透明な響きの中にイギリスの民俗音楽を巧みに盛り込んだ、珠玉の室内楽曲も多数遺しています。
本日演奏する『ブルック・グリーン組曲』の曲名は、ホルストがかつて音楽を教えていたセント・ポール女学院のあるロンドンのブルック・グリーン地区に由来しており、1913年に作曲された『セント・ポール組曲』同様、同校の生徒たちによる弦楽合奏団のために先生自ら書き下したものです。しかし現役の教師として勤めていた20年前と違って1933年はまさに彼が教職を辞したあとの最晩年であり、入院先の病院で病と闘いながら筆を進めていたと伝えられています。
曲は『前奏曲』『エアー』『踊り』の3曲で、本来は弦楽五部のための曲ですが、本日は作曲者の指定に基づき4本の木管楽器を部分的に加えて演奏します。
初演は翌1934年3月にセント・ポール女学院の弦楽合奏団により行われ、そこには病を推して演奏会場に駆けつけたホルストの姿もありました。そしてホルストが公の場に姿を見せたのは、残念ながらこれが最後となったのです。
(2011.2.28)